なぜうちの犬はビビリなの?

「うちの子ビビリなので...」これは散歩の途中で出会う犬の飼い主さんがしばしば口にする台詞だ。そうした犬は相手の犬が寄ってくると、顔を背け尻尾を下げ、姿勢を低くして飼い主の後ろに隠れようとする。中にはリードを引いて逃げ出す犬もいる。犬なのに犬が怖い犬の典型的な状態に陥っていることが多い。ちなみに写真のチワワは飼い主さんが言うほどビビリではなさそうだった。犬の態度は相手次第でも変わる。こちらの犬がごく平和裏に挨拶すれば、ビビリの犬も怖がらずに挨拶を返せるようになるのだ。これは大変重要なポイントだ。

ちなみに家のジャックラッセルテリアのジャンは犬が相手だと超社交的なので、相手の犬が飼い主の脚の後ろに隠れようが、吠えかかってこようが、はたまた咬みついてこようが、平気で尻尾をブンブン振りながら近づき、襲い掛かられてもスフィンクスのポーズで遊ぼうと誘い続ける。

ジャンは二度に渡る椎間板ヘルニアで下半身不随に陥ったが、獣医師界のブラックジャックと呼ばれる名医のおかげで今は普通に歩くことも走ることも出来る。さらにジャックラッセルテリアと言う狐狩り猟犬のため、高い身体能力を持ち、相手の本気の攻撃もかわしてしまい、その上たいていのことは恐れない性格なのでどんな危なそうな犬にも挨拶に行く。ある意味ビビリな犬にとっては迷惑な存在かも知れない。

だが僕は相手の犬が本気で逃げださない限りジャンを止めない。なぜならビビリな犬だからと言ってそれで済ませていていいのか?と常々疑問に思っているからだ。

実は飼っている犬がビビリだと、その犬は色々危険な目に遭い易い。その事を明確に認識している飼い主さんは少ない。例えば何かにおびえた犬が車道に飛び出して交通事故にあったり、そこまで行かなくても、いきなり全速力で走り出して迷子になったりすることがある。

僕は以前、山の中で野犬化しかけていた紀州犬を拾ってきて飼ったことがある。そして、その紀州犬がよその放し飼い犬に追いかけられて逃げ出したのも経験している。まだ子犬だったが紀州犬の全速力の疾走は人間の脚で追いつけるようなものではなかった。ブランと言うその犬は自宅から数kmはなれた隣の区との境目まで逃げて行ってしまい、翌日の昼まで行方不明になっていた。

自分の犬が行方不明になった時の失意と恐怖は今でも忘れることが出来ない。幸いブランは翌日の昼ごろには見つかった。僕はそれ以来コイまたはツケの一言で犬が脚側に戻る訓練を以前より熱心に行うようになった。

性格がビビリなだけでなく、高い身体能力や鋭い牙を持った犬の場合はもっと深刻だ。

犬は恐怖を感じた相手から逃げられないと感じると、反撃に出て相手を追い払おうとする。性格がビビリでも犬の咬みつく力は弱くならない。むしろパニックになった犬はアドレナリンの分泌によりいつもより高い活動能力を得る。さらにパニックになっていれば、咬みつく力の加減も出来ない。その結果、柴犬などの獣猟犬やドイツシェパード・ドーベルマンなどの警察犬指定犬種がビビリだと、普段はビクビクしていた犬が、いきなり咬傷事故の加害者になってしまったりもする。

ブランの場合も、洋銀のスプーンを潰して作った迷子札を下げていたのに、誰かがそれを見ようと近づくといきなり咬む振りをするので、誰も迷子札を見ることが出来無かった。つまりビビリの犬は交通事故に遭う可能性が高いだけでなく、保護されても飼い主にすぐ連絡が来ない可能性が高い。これは犬の生存だけでなく、なかなか飼い主の下に帰れないと言う点で、犬の精神衛生上も望ましくない事態に繋がるだろう。

では犬がビビリになってしまうのはなぜか?

実は多くの場合、ビビリはその犬の本来の性格ではない可能性が高い。

原因の多くは、その犬が散歩を始めた時期=社会化デビューの遅れにあることが多い。

ビビリな犬の飼い主さんに 「生後何ヶ月くらいで散歩に出しましたか?」 と訊ねると「ワクチン接種が全部終わってからだから4ヶ月過ぎでした」

と言う答えがよく返ってくる。

つまりその犬は生後3ヶ月台の社会化の臨界期を、まだワクチン接種が完了していないと言う理由で無為に過ごし、恐怖期に入ってから外に連れ出された可能性が高いのだ。

恐怖期は犬が自らの敵を学習する時期にあたる。そのため犬は初めて出た散歩であったちょっと怖い事でも必要以上に怖がるようになる。他の犬が「こっちにおいでよ」と吠えたのも怖い、クルマが警笛を鳴らして通ったのも怖い、よその人が無神経に撫でようと大きな手の平を頭に近づけてきたのも怖い、つまり多くの犬や人、事象までもを危険だから避けるべきものとして学習してしまうのだ。そしてそれは修正されない限り一生続くビビリに繋がる。

さらに飼い主が犬にとって散歩の時間は、社会化の有効な時間だと認識していないことも犬のビビリの原因になる。

生後3ヶ月台の「社会化の臨界期」に出会った人や犬や事象なら、たった5~10分程度の短い触れ合いでも、子犬は一生を通じて親しい相手またはものとして認識し続けるようになる。その大切な社会化の臨界期をワクチン接種の未完了を理由に無為に過ごしてしまう飼い主さんが意外に多いのだ。

つまり 「犬には社会化が絶対必要で最重要課題だ」 「特に子犬の社会化は生後3ヶ月台の臨界期が一番大切だ」 と認識していない飼い主さん自身が自分の犬をビビリにしてしまうわけだ。

一旦ビビリになってしまった犬でも、犬が若いうちなら社会化のやり直しは可能だ。ビビリな犬を飼っている飼い主さんは、それが犬にとって本来のあるべき姿ではなく、危険な状態ですらあること、最悪ビビリな犬は被害者だけでなく加害者になりうることを認識して欲しい。そしてあなたの犬が恐怖期でないなら、今日の散歩からでも自分の犬がビビる対象への社会化をやり直して欲しい。相手は自分の犬に優しく挨拶に来てくれるよその犬、よその人、散歩の途中のちょっとした変わったこと、誰からどこから始めてもいい。

「すいません、うちの犬ビビリなので、吠えちゃうかも知れないけど(ワンちゃんと、あなた自身と)挨拶させてもらっていいですか?」

そう問いかける勇気を持つことが、自分の犬のビビリを治す第一歩となるはずだ。

著者:史嶋桂
転載元:なぜうちの犬はビビリなの? | dog actually - 犬を感じるブログメディア


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