きっかけは1頭の保護犬との出会いから

引用の出典元:tsunayoshi.tokyo

当時、犬の保護活動とは全く関係のない職についていたという代表の鈴木氏。わんずぺ~す設立に至ったのは、いまの愛犬を保護団体から譲渡してもらったことが大きいなきっかけだった。

犬を譲渡してもらう際、その保護団体の現・代表と仲良くなったことで、犬に関する様々な社会問題や保護活動の状況を知ったという。

ちょうどその頃、犬の殺処分に関するテレビ番組をみて、動物福祉国と言われている国々と日本との格差に大きな衝撃を受けたのである。

その実情を知った時に「私にも何かできることはないだろうか」「犬たちのために、何か力になれることはないだろうか」と考えるようになったそうだ。

しかし、当時は別の職にも就いていた兼ね合いで、なかなかスタートに踏み切れない時期があったという。

そんな中、父の福祉施設への入居がスタートのきっかけとなった。始めるにあたって最初にしたことは、それまで住んでいた自宅の売却。
そして、その売却によって得た資金を元に、吉祥寺に店舗を借りた。
初めは動物保護施設という形態ではなく、そういう団体をサポートするお店として。社会問題を解決するための企業として、株式会社の形態を選んだという。



代表・鈴木氏(以下、鈴木):「なぜそうしたかというと、私自身、保護活動での実績もなければ特別な資格もない状態。

事前リサーチを通して他の団体様の状況などを聞いた上でも、このまま保護活動自体をダイレクトにいきなりやっても、ご寄付を集めることは困難だと考えました。

それだけ、ご寄付を集めるということは大変なのです。ということは、何か事業を展開し収益を生まなければ結局のところ長く保護活動を行うことができない。

したがって、事業で得た収益を活動の費用にあてていくことがベストだと考えたのです。

保護犬のお世話や譲渡活動もしながら、なおかつ犬に関するビジネスを展開していくというプランでした。 」

6頭ですら里親が見つからない

引用の出典元:tsunayoshi.tokyo

しかし、実際にスタートしてみると困難の連続。思ったように上手くいかない日々に悩まされたという。

実績もない状態での株式会社という形態が、かえって寄付を集めにくい状況にしてしまったのである。その時期というのは、保護した犬たちもなかなか譲渡に結びつかなかった。



鈴木:「はじめは6頭の保護活動から始まったのですが、その6頭ですらなかなか里親が見つからないという経験をしました。

場所がら家賃も決して安くなく相当な維持費がかかりますし、人手も雇用していたので自宅を売却して作った資金がどんどんなくなっていく状況でした。」



ドッグトレーニング教室やイベントを積極的に開催してみたり。

いろいろ思考錯誤しながらも、"保護犬のいるカフェ"として事業を展開していたものの、当時はなかなか浸透しなかった(今でこそ保護猫のいるカフェというものが浸透しているが、その頃は保護犬のいるカフェなどどこにもなかったという)。

思ったように上手くいかない日々と、どんどん減っていく資金。何度もお店をやめようと思ったのだが、その度に色々な人に助けられてきたと鈴木氏は語る。

その後も、苦労は多いながらも店舗を経営していたのだが、吉祥寺の借りていた店舗が道路拡張工事によって立退き依頼がきたことを契機に、現在の場所に移転を決めたのだった。



鈴木:「ですが結局、私どものような小さい団体というのは、どこへ移動しようが資金が集まりにくく、それこそが一番解決しなければならない問題です。

もともと私自身もその部分が一番難しいと考えていたので、事業を展開しながら同時進行で保護活動しなければいけない…というのは、今でも同じだと思っています。

しかし、それをやるにあたっても資金や人手や場所が必要で…結局その部分が上手く進まずにもがいているっていうのは、昔も今も同じ状況ですね。」



吉祥寺から東大和への移動を契機に、企業という形態から任意の保護団体として、また1から寄付を募ることにした。

設立時に提携した沖縄の団体とは2011年に提携を解消し、同じく沖縄の「NPO法人ワン’s パートナーの会」とパートナーシップを築いて以降、譲渡が順調にいくようになったという。

任意の保護団体になってからは、それまで行ってきた事業やイベントなどを一旦休止し、そのぶん譲渡活動に注力していった。

また、わんずぺ~すは子犬の保護が多いこともあって、小規模ながらこの4年ほどで251頭を譲渡した実績があり、高い譲渡率を維持している。

わんずぺ〜すの毎月の譲渡率は90%以上であり、絶対数での違いはあるとはいえこれほどの高い譲渡率を示す背景には、日本人の子犬思考によるものが大きいのだと鈴木氏は言う。



鈴木:「日本はまだまだ子犬を欲しがる傾向にあり、都内や神奈川県などでは子犬の保護があまりないこともあって、もし子犬が欲しいとするとペットショップやブリーダーから買うか、遠方の団体まで足を運ばなければならなくなる。

都内に拠点を置いて、沖縄でたくさん捨てられ、殺されてしまう子犬を空輸し、子犬が欲しい人が保護されている子たちを選べるようにと、マッチングしてきました。」



また、わんずぺ~すに子犬が多い理由として、沖縄の団体とパートナーシップを築いていることも関係しているという。



鈴木:「沖縄は犬猫の殺処分数が全国トップクラスの地域で、子犬も多数捨てられ殺処分となっているんです。」



つまり、現状わんずぺ~すはそれらを繋ぎ合わせるという意味でも機能しており、大きな役割を果たしているのである。

今でも悩みと葛藤が絶えない、譲渡条件の設定

引用の出典元:tsunayoshi.tokyo

保護犬の里親希望者に提示する条件のことを譲渡条件という。また、譲渡条件は団体によって多種多様である。

鈴木氏がわんずぺ~すを立ち上げたきっかけの一つとして、色んな団体の譲渡条件を知った時に、その条件のハードルの高さに驚きを隠せなかった経験があるという。



鈴木:「残念なことに、里親詐欺というものが未だに後を絶ちません。それらは、とても残酷で虐待目的でもらおうとする人もいます。また、残念ながら、せっかく助けた命が再度、飼育放棄されるような 事態になることもあるのは事実です。」



せっかく保護して大切にしてきた子がそのような運命にあってしまうことは、保護団体にとってはこの上なく悲しく、そして何よりも辛いことである。

里親詐欺による残酷な虐待を含め、保護犬が辛い運命にあわないためにも、やはり一定のハードルは設けなければいけない。

しかしそうなってくると、シングルはダメとか、小さいお子さんはいるところはダメとか、これから介護など比較的大きなライフイベントがある家庭はダメとか・・・

そういう制約がたくさん出てしまうことも、これまでの多くの悲しく辛い前例があるからだという。





それでも、どうにか多くの人に里親になって欲しい

鈴木:「私がウチの子を保護団体から引き取ったときは、私がシングルであっても父親と暮らしていたので里親になることができました。

しかしその後、父のもとを離れて暮らすようになったのですが、この子がもし亡くなって、また新しい子を保護犬の中から引き取ろうと思ったときに、今度は譲渡してもらえないんだ・・ということを思ったんです。

ペットショップ等では買いたくないのに譲ってくれるところがどこにもないとすると、それは凄く辛いなと思いました。」



万が一、里親になった人間に何かあったとき、真っ先に路頭に迷うのは犬である。

つまり、里親になる際には自分に何かあったときの保証が必要になってくる。



鈴木:「確かに、自分に何かあったときに誰が犬の世話をするのかという保証が必要です。

終生育養がどこの団体も必須条件ですが、人生もしもの際の備えは誰にでも必要ですから、万が一、飼育困難となった場合に託せる相手が、保護団体であると安心なのかなとも思います。

そして、もしもの時のための保険のようなものがあれば、その時は犬と保険金を団体へ(リビングニーズのように)渡し、お世話をお願いしたり、再度里親探しをお願いできる。他人に保険金を渡す仕組みはとても困難なので、そんな保険はまだないんですけど・・。

人生何があるかは誰も予想できず、シングル以外はリスクがないというものではありません。それなら、もしもの際の保険的なシステムを各保護団体が提供できればよいのにと思いました。

システムを導入する保護団体が多いほどリスク分散にもなりますし、それにより犬の譲渡先が広がります。」



鈴木氏は、保護団体だからこそできることがあるとも言う。



鈴木:「もし私たちシングルが愛犬を預けるとすれば、信頼できる保護団体へ預けたいですね。

自分が信頼できる団体であれば絶対的に命を大切にしてくれるし、最期もきちんと看取ってくれるだろうという信頼があると思っていて、だからこそ団体にお渡しするんです。

なので、そういうシステムを社会全体で造りたいっていうのが、設立当初から今も変わらない私のもう一つの希望なんです。

保護団体というのは、犬をただ保護するだけはなくて、犬を家族に迎えたいという人たちと犬の先々も見据えてサポートしていけるような団体になって欲しいし、そういうのがあったらいいなって思ってたので、それを形として作っていきたいと思っています。」

今こそ、社会的な仕組みが必要だと感じる

引用の出典元:tsunayoshi.tokyo

また、シングルであるからこそ、高齢者であるからこそ犬と過ごしたいという想いは切実な願いであって、 特に寝たきりになったとしても犬にはずっと側にいて欲しいという想いは痛いほど理解できるという。

だからこそ、そういう願いを叶えられる社会になって欲しいし、それをサポート・実現できるのは保護団体が率先して取り組んでいくべきだと鈴木氏は語った。

確かに、今後は絶対的なニーズとして前述のような声が出てくるだろう。

お年寄りも将来ずっと犬と過ごせるシステムや、シングルの方でも心配なく犬を飼えるシステムというものは、必ずこの社会全体で取り組んでいかなければならない問題だろう。



鈴木:「またそれらは、わんずぺ~すのこれからの目標でもあります。 ただ、今の時点でここを維持することすらままならない状況なので、なかなかそこまですぐに届かないっていうのが実情ですね。

保護団体っていうものは、現実問題として保護活動で手一杯になっちゃうんですよ。どうしても他のことができないっていうのが実際のところです。

今後の業態を考えたときにも、これからは色々な企業さんと保護団体がタッグを組んで一緒に何かできるような流れが生まれて欲しいですね。

例えば不動産関係のところや、メディアであればPRする場所を提供させてくださる方々とか、そういう資金やチャンスを提供してくださる投資家の方々ですとか・・

そういう方々とタッグを組んで新しいモデルを造っていくことができたらすごくいいかなとは思うんですよね。」



結局のところ、社会全体でどういう仕組みを創っていけるか、そして近い将来、それらの問題は確実に私たちに訪れるのだと鈴木氏は言及する。



鈴木:「やはり多くの方にも考えてもらいたいことでもあって、今ご家族でワンちゃんを飼われていてこういう話がピンとこないとしても、老後とか”来るべき時”が来たときに、こういうのがあったらいいなって思うことが出てくるとおもうんですね。高齢化社会ですし。

だからホントに、今それを造っておかないと、先々それが必要となったときにその受け皿がないとなると困ると思います。」

【後編】「里親と保護犬の先々までもサポートしたい」保護活動への熱い想いと葛藤



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この記事を書いたライター

Tsunayoshi オオバやん
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