
保護犬にもチャンス到来!警察犬として第二の人生を歩みだしたピットブル
何かと誤解を受けたり嫌厭されがちな犬種のアメリカン・ピット・ブルテリア。アメリカでは、シェルターに辿り着く数が最も多い犬種とも言われています。そんな彼らに『警察犬』として、千載一遇ともいうべき名誉挽回の機会が与えられています。
この記事の内容はこんな感じ!
警察犬の歴史
警察犬に使用される犬種
警察犬になったアメリカン・ピット・ブルテリア
警察だけでなく、レスキューにいる犬にも素晴らしい試み
警察犬の歴史

警察犬の歴史は、19世紀までさかのぼります。1888年にイギリスで人々を震え上がらせた連続殺人鬼『切り裂きジャック』事件。犯人を特定するためにブラッド・ハウンドが使われ、パトロール時に犬を伴ったのが警察犬のはしりと言われています。
1899年にはベルギーが警察犬の訓練を公式に開始しました。1910年までにはドイツの600以上の都市で警察犬が活躍し、1938年にはロンドン市警察が2匹のラブラドール・レトリーバーを警察犬として使用していたという記録があります。
アメリカでは、1910年にベルギーから輸入した警察犬を皮切りに、警察犬の育成に力を入れ始めました。今では警察犬は警察官にとっても、市民にとってもなくてはならない頼もしい存在になっています。
ちなみに、アメリカでは警察犬は『K-9オフィサー』の名称で親しまれています。英語で犬を意味する単語『canine』が『K-9』の発音に似ていることが理由です。
一方、日本の警察犬の採用は1912年です。警視庁がイギリスから2匹の警察犬を迎え入れたとされています。
警察犬に使用される犬種
日本では、警察犬には指定犬種があり、どんな犬種でも警察犬になれるわけではありません。最もメジャーで知名度が高い犬種は、ジャーマン・シェパード。他には、エアデール・テリア、ボクサー、コリー、ドーベルマン・ピンシャー、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバーがいて、指定犬種は合計で7種になります。
民間の嘱託警察犬には上記指定犬種意外も認められています。ミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードル、ミニチュア・シュナウザー、柴犬、チワワなどがニュースで取り上げられたのは、みなさんの記憶に新しいはずです。
アメリカでは警察犬として活躍している犬種は、誰もが納得のジャーマン・シェパード、従順で聡明なベルジアン・マリノア、日本では馴染みが薄い黒い虎毛のダッチ・シェパードがトップ3です。その他の犬種には、ロットワイラー、ドーベルマン、ブービエー・デ・フランダースがいます。
警察犬の役割は、嗅覚を生かして犯人の追跡・捕獲を行なうことです。また、警察犬の中には警備犬と呼ばれる犬がおり、彼らの役割は、爆発物や麻薬の探知と識別、災害時や犯罪時などの捜索です。
警察犬になったアメリカン・ピット・ブルテリア
今までは、アメリカではジャーマン・シェパードをはじめとする犬種が警察犬の代名詞でした。ところが2016年、大変興味深いニュースが全米を賑わせました。なんと、アメリカン・ピット・ブルテリアが警察犬(探知犬=日本の警備犬)として正式に採用されたというのです。
この試みは、2つの組織アニマル・ファームとユニバーサル・K9が協力して始まりました。シェルターにいるアメリカン・ピット・ブルテリアを保護したユニバーサル・K9が警察犬になるための必要な訓練を行い、アニマル・ファームが訓練の費用を肩代わりする仕組みです。
大勢の人の予想に反し、訓練は順調に進み、今では全米で9匹のアメリカン・ピット・ブルテリアが警察犬として活躍中です。
ニューヨーク州のポーキプシー市警察に所属するアメリカン・ピット・ブルテリアのキアは、警察犬として第二の人生を歩むシェルター出身の1匹。ブルズガル刑事の頼りになる相棒です。主な任務はパトロールで、行方不明の人間の捜索を行う訓練も終了済みです。ブルズガル刑事は、キアを全面的に信頼していると言います。
参照:Pit Bulls Are the New Breed of Police Dogs
参照:Police Canines in History - Dogs for Law Enforcement
警察だけでなく、レスキューにいる犬にも素晴らしい試み
シェルターにいる犬を保護して警察犬として活躍させることは、警察と犬双方に利益をもたらしています。
まずは、警察犬を育てるまでの経費の削減に一役買っていることです。アメリカでは一般的に、使役犬として繁殖された犬を確保するには、ヨーロッパからの輸入が一番とされています。仔犬のうちに適性を判断するのは困難です。警察犬向きの気質を持ち合わせた個体かを確認するには、ベルジアン・マリノアで約1~2歳、ジャーマン・シェパードでは約2~3歳になるまで待つ必要があります。それに加え、身体検査も必須です。全てクリアするまでには、かなりの時間とお金を費やすことになります。
上記の理由から、小さい警察署では犬をブリーダーから購入することもままならない状況です。そのため、寄付された犬を訓練し、経費のほとんどを寄付金で賄っています。
警察犬の試験を突破した犬は、エリート中のエリート。たとえそれが、元シェルターにいたアメリカン・ピット・ブルテリアでも、立派に試験に合格しているのですから、その優秀さは誰にも否定出来ません。
AKCは、アメリカン・ピット・ブルテリアは、本来は飼い主に従順で子供にも優しい犬種であると定義しています。元々闘犬であった歴史を考えると、彼らの『粘り強さ』や『忍耐強さ』は、上手く引き出すと長所になり得るでしょう。
次に、この取り組みにより大切な命を救うことが出来ます。殺処分になるかも知れなかったアメリカン・ピット・ブルテリアが、警察犬として第二の人生(犬生)を得たのですから、これ以上に喜ばしいことはないでしょう。
悪評ばかりが目立つアメリカン・ピット・ブルテリアですが、これを機に、是非名誉挽回を図って欲しいところです。彼らがアメリカ市民の安全を守る頼もしい存在として認められる日も、そんなに遠くはないかも知れません。
