盲導犬「アトム号」が失踪した背景にあるもの

引用の出典元:www.fgda.or.jp

2012年1月23日の夜8時ごろ、盲導犬の"アトム号"(3歳オス ラブラドール・レトリバー)が、長崎県に住む盲導犬ユーザーの男性(当時70歳)の自宅から失踪しました。

様々な訓練を受けた盲導犬にはあり得ない行動です。2009年11月に九州盲導犬協会から貸与されたアトム号にいったい何が起きたというのでしょうか。

ユーザーは鍵こそかけていなかったものの、ドアはしっかり閉まっていたと言い、警察署への盗難届を出し、800枚ものチラシを街頭で配りました。

地元長崎新聞は2月1日号で「相棒の盲導犬アトムを探して」という見出しで失踪事件を掲載し、2月4日には朝日新聞が「盲導犬盗まれたの?」と、九州盲導犬協会の連絡先と情報提供を呼びかけました。

ところが、地元の動物愛護団体のブログに、「日常的な虐待行為があり、室内での排泄を許さない、ユーザーをサポート中、歩きながら失禁している」という記事が書かれました。

さらには、それに反論する形で「愛護団体の発言は反盲導犬派のデマや中傷を引き合いにしたものである」という記事も投稿されるなど、大変な物議を醸したのです。



■一度は引き上げたものの再貸与



実は、盲導犬ユーザーの元にアトム号が来た翌月から2010年5月にかけて、近隣住民から「虐待している」「ガリガリに痩せている」という通報が入っていました。

通報の翌日には協会スタッフがユーザー宅を訪れ、アトム号の状態を確認しに行ったところ、アトム号はガリガリどころか逆に太り過ぎだったことが判明。

いずれにしてもネット上の騒ぎや近隣からの通報を鑑みて、その日、アトム号を協会に連れ帰りました。

9月になり、ユーザーからアトム号を再貸与してほしい、という希望を受け、協会側は宿泊による再指導を行い再貸与する流れになったのです。

その際には、近隣との軋轢を解消するため、改めて盲導犬と暮らすことを挨拶させ、元々義務とされている1~2カ月に1度の動物病院での健康診断を行わせました。

また、協会スタッフはユーザー宅に抜き打ち訪問を繰り返し行うなどして、アトム号に異変がないかを常に確認していたと言います。



■繰り返されていた失禁。そして失踪




引用の出典元:真実は1つ・・・|長崎 Life of Animalのブログ



引用の出典元:真実は1つ・・・|長崎 Life of Animalのブログ



引用の出典元:真実は1つ・・・|長崎 Life of Animalのブログ


2012年1月20日(金)に、協会スタッフがユーザーの外出に同行したところ、アトム号は歩きながらの失禁をしてしまったのです。

アトム号の失禁はこの日だけではないことを知っていた協会スタッフは、以前からきちんと排泄させるよう厳しく指導をしていました。

また、アトム号の肥満も解消していなかったことから、同日にアトム号を返還してもらうことをユーザーに告げました。

ところが、1月23日の月曜日に健康診断の予定があったため、その後に引き上げる予定を立てます。この判断がアトムの犬生を良くしたのか悪くしたのか…。

そして、アトム号はその日の夜、ユーザーの自宅から失踪してしまったのです……。



■アトムが無事なら8歳に




引用の出典元:アトム号発見保護ご協力のお願い|九州盲導犬協会


警察や協会の捜索も虚しく、アトム号の行方や安否はわからないまま。ユーザーのその後も公表されていません。

アトムが自分でドアを内側に引いて脱走するのは難しく、心配した誰かがアトムを連れて行ってしまったのか、ユーザーがアトムをどこかに連れて行ったのか、という憶測が飛び交い、事の真相は不明のままです。

ただ、盲導犬が歩きながら排泄をしてしまうのは、明らかに排泄の時間を作ってあげていないことが原因なのではないかと感じます。

股関節を痛めるほどに肥満になり、生命として最も基本的な排泄をないがしろにしたことは、どう見ても虐待なのではないでしょうか。

仮に人間が作った「虐待」という言葉が当てはまらなかったとしても、アトムの心身はとても苦しい状態にあったことでしょう。

盲導犬をリタイアした犬は、高い確率で膀胱炎になっていると言いますから、アトムの膀胱にはすでに問題が発生していたのかもしれません。

アトムが失踪してから5年以上経った今、未だにアトムの発見報告はどこからもされていません。アトムが無事でいるなら8~9歳。アトムの身体的特徴として「狼爪」と呼ばれる爪が前両足ともないそうです。

アトムが長崎や九州圏内にいるとは限りません。もしアトムと似た犬を見かけて強い確信を感じたら、九州盲導犬協会に連絡してください。

また、協会としてはアトムの失踪に関して、何らかの違法行為があったとしても協会としては何ら責任追及しない、と言っています。

盲導犬ユーザーはイヤホンをしてはダメ!?

引用の出典元:www.facebook.com

盲導犬ユーザーであれば、犬の体や気持ちを考えた「当たり前の愛情」だけは持っていただきたいものです。

Facebookに投稿された動画が物議を醸しています。


盲導犬と一緒に電車に乗っている若い女性。動画を撮影し投稿した人によると、湿度の高い車内で盲導犬はレインコートを着て、カバンを背負っていたと言います。

片耳にイヤホンをはめた女性は、この後イヤホンを両耳に装着しました。投稿者はこれに違和感を感じたのです。動画を見た人からのコメントには「身勝手」「悲しい」「盲導犬反対」「盲導ロボットの普及」といった単語が多く見られました。

健常者に比べて視覚からの情報を得るのが難しいからこそ、盲導犬を貸与されているはずです。

盲導犬にとって非常に緊張する空間において、聴覚だけはせめて犬に向けてあげてほしかったと感じます。

「犬が暑そうだからレインコートを脱がせろ」とは言いません。しかし、公共の場において盲導犬の状況を完全に把握しておくのはユーザーの責任でもあり、周囲で配慮してくれる人への思いやりでもあるのではないでしょうか。

みなさんはどのように感じたでしょうか。筆者はこの女性にこう言いたいです。

「今、あなたの目の代わりになってくれているのは、感情を備えた生き物なのですよ。自宅ならいざ知らず、危険も伴う車内で不安げな表情で座っている犬の気持ちを考えてあげてください。あなただけを頼りにするよう訓練されているのですよ」と。

盲導犬を貸与されるユーザーは障がい者であることから、世間的には性善説的に捉えられがちです。もちろん、ほとんどのユーザーが愛情深く盲導犬に接しているのはわかっています。

この女性とて人に言えない辛さを経験していることでしょう。無知ゆえに犬の気持ちを深く洞察できないだけで、知ったあとは十分に気配りをできるに違いありません。

しかし、筆者は視覚障がい者だからと大目にみるのはかえって失礼だと考えます。物理的にできないことは喜んでサポートしますが、愛情や心の在り方は健常者となんら違いはないはずです。

アトムが我慢しきれずに失禁しながら歩く姿や、車内で緊張と不安に満ちた盲導犬の表情を見ると、とても心が痛みます。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックが無事に開催されるならば、多くの障がい者や盲導犬、探知犬などの使役犬を私たちも目にすることになるでしょう。

また、2020年の屋外使用を実現すべく、「盲導犬型ロボット」や「障害物回避先先導ロボット」などの開発も進んでいると言います。ストレス度の高い仕事を担う盲導犬だからこそ、1日も早いロボットの実用化が待たれます。

今回ご紹介した事例のように、盲導犬を取り巻く環境はユーザーの愛情いかんによって大きく変わりますが、ロボットが登場するまでは、私たちも愛情深く盲導犬の様子を見守ってあげたいものですね。

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Tsunayoshi ひまわり
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