犬とあなたの関係を改善するには?スワレからやり直そう

引用の出典元:shutterstock.com

写真はドッグランで遊んでいたのを呼び戻され、スワレ・マテを命じられ「首輪をつけるよ」と言われて首をさしのべるマイロとジャン。そういう我が家の犬たちを見た他の飼い主さんからよく言われたのは、自分も犬との関係を改善したいと言う趣旨のことだった。うちの子(犬)にももっと良い子になって欲しい、自分の言うことを素直に聞いて欲しい。でもうちの子はお宅のワンちゃんと違ってバカだから。そんな風に諦め気味の飼い主さんが意外と多かった。でも本当にそうだろうか?だってマイロとジャンだって家に来た当初からこんな風に飼い主の言うことを聞く犬ではなかったのだから。

そういう飼い主さんにお話を伺うと、様々な訓練教室に通ったけど、自分の犬の反応がいまいちだと感じている飼い主さんはかなり多い。飼い主さんのほとんどは、それを犬のせいにして、この犬種はそういう性質だから、とか、訓練向きの血統ではないから、あるいは成犬になって飼いはじめたから、とか、様々な理由をつけて、犬との意思疎通の改善に諦め気味になっていることが多い。

だがそういう飼い主さんの行動を見ていると必ず共通する点がある。それは犬に飼い主の意図を理解してもらう方法が良くわかっていない様に見えることだ。

厳しい言い方をすれば飼い主が犬の前で一人相撲をとっているような場合が多かった。例えばスワレと命じられた犬が飼い主を見ずによそを向いているとか・・・

僕は犬が飼い主の働きかけ、言い方は何でも構わないが、命令、指示、キューに従うかどうかは、飼い主が犬に向かって発した働きかけを、犬が理解し実行し、その事が犬自身の利益に繋がったかどうか?それらが何度も繰り返され、犬がその一連の関係性を十分学習したかどうかにかかっていると思う。

関係改善ためには、まず飼い主の側が犬の行動を観察し、犬が自主的に行った事でも飼い主の意図にそってやった事にしてしまう、と言う手がある。きっかけは犬の自主行動でも構わない。そしてそれを褒める、と言うところから始める。僕はマイロにこの方法でスワレを教えた。

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補助動作に従うような素直な犬ならもっと簡単だ。犬にスワレと声符(声の指示)を出しながら、犬の腰を押し下げ、スワレの姿勢を取らせる。

犬が自主的でも多少逆らってもそれに座ったら 「ヨシヨシ、スワレ」 と笑顔で大げさに誉めて餌の報酬を与える。ここで大切なのは何がヨシヨシなのか犬に覚えてもらうこと。

だから変な言い方だけど既に座っている犬を「ヨシヨシ、スワレ」と褒めるのだ。その事で犬は声符と自分の行動を関連付け、なんと言われてどんな行動をとったら褒められたかを理解し易くなる。

さらに犬は人間の笑顔を、犬がリラックスしている時の表情と同等に捉える。
あるいは良い意味で、自分と同じ感情に基づく表情と誤解してくれる。
人間も口を横に広く薄く開いた犬の表情を、人間の笑顔のように捉える。
人によっては犬を擬人化して、それが犬の笑顔だと言う人もいる。

つまり人間も犬の表情を人間の表情に置き換えて誤解しているわけだが、それは別に構わない。誤解に根ざした勘違いでもお互いに似たような感情に根ざした表情であるのはかわりないからだ。

だから、犬が望ましい行動を見せた時、飼い主は犬をきちんと笑顔で誉めるべきだ。
それは必ずしも声符に従った時だけでなくても良い。
犬が勝手に取った行動でも望ましい行動なら笑顔で毎回褒めるのだ。
さらに餌の報償は多少後回しでも良い。

良くポジティブトレーニングだからとタイミング良く餌を与えることにばかりこだわる人がいるが、犬の反射神経は人間よりずっと優れており反応も早い。だから犬にとっては、飼い主がすばやく餌を差し出しても、ゆっくり差し出しても大きな差はない。大切なのはその餌が犬の行った行動の褒賞(報酬)だと犬が理解することだ。

むしろ犬は人間の表情や態度の変化を視覚と聴覚で人間よりすばやく確実に捉える。
だから飼い主が餌を出すことを急ぐあまり、笑顔と褒め言葉=訓練の大切な褒賞を省いてしまうほうが問題なのだ。

しかも犬の視覚は人間と異なり、コントラスト優先で動きを捉えることに長けている。
彼らの視覚はおそらく単色のコントラストが強いもので、人間のような多彩な色は捉えることが出来ない。

だが動き=例えば飼い主が取り澄まして声符を出した時の表情から、ヨシヨシ・スワレと笑顔で褒めたときの表情の変化にはずっと敏感なのだ。

この表情の変化を捉える犬の観察力は、祖先のオオカミが群れの中でお互いのコミュニケーションを取るのに、お互いに視線をかわし、その表情の変化や動作で相互に意図を組み取り合うことで培われたものだ。

オオカミの観察者は、よく彼らの表情の変化を百面相にたとえる。そのくらいオオカミたちは表情の変化が豊かで、表情の変化を使ってお互いに意思を伝え合うことが出来るのだ。

犬の飼い主である人間も本来は表情豊かな類人猿の末裔だ。だから自分の感情の変化=犬が言うことを聞いてくれた、と言う喜びを素直に笑顔で犬に伝えるべきなのだ。犬はそうして人類最古の家畜になり、かけがえのないパートナーとなったのだから。

犬も狼同様相手の表情や仕草から、相手の感情の変化を読むのに長けた生き物だ。

だから飼い主は訓練の最中、たとえ犬が自分の意図に沿わないことをしても、不安な表情を見せてはいけない。犬が言うことを聞いてくれないときに残念そうな表情を見せるのはいい。だが間違っても犬の吠えや唸り等攻撃的態度に怯えるような表情や仕草は見せてはならない。

なぜなら犬は異種である飼い主の表情や仕草=笑顔以外にも敏感に反応するからだ。

飼い主がちょっとでも犬を怖がれば、犬は自分が強い態度で出れば飼い主が折れると望ましくない学習をしてしまう。一度そんな風に見限られてしまうと犬はその状況においては飼い主を無視してもかまわない存在と見なすようになる。そうなってしまえばアイコンタクトはおろか主従関係など築くことは出来ない。

反対に良い方向で飼い主の表情変化をうまく読ませるには条件がある。

それは飼い主の表情や仕草の変化が犬の利益に頻繁に繋がる経験を繰り返すことだ。

飼い主からスワレと視符(仕草の指示)と声符(言葉の指示)を出された犬は、自分がスワレに従った時の飼い主の反応をまず見る。

飼い主に笑顔で大げさにヨシヨシ・スワレと褒められ、その後好みの餌がもらえれば、スワレの視符と声符と自分の座る行動と、飼い主の笑顔と褒め言葉と餌の褒賞を関連付けて学習することになる。

この関連付け学習が次第に強化されていけば、犬は自主的に飼い主の顔を見て、アイコンタクトを求め、飼い主の視符や声符に注目するようになって行く。特に僕が飼っているテリアのような犬は自主独立の気風が良しとされたこともあり、何もせずに犬の方からアイコンタクトしてくれるような作業犬とは訳が違う。そういう犬こそこうした学習が重要なのだ。

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いずれにしても声符と視符を出し続け、犬がそれに従い、笑顔と褒め言葉と餌の褒賞を与え続けた犬は、やがて一連の褒賞(笑顔と褒め言葉と餌)を期待して自ら飼い主の前にやってきてスワレの姿勢を取ることさえ始める。フセを覚えた犬なら目の前でわざわざ伏せて見せることさえ始めるだろう。

ここまで関連学習が完成すれば、次の課題に進んでもすぐに犬は新しい訓練課題に従うようになる。だから基礎中の基礎であるスワレの訓練は最初に確実に完成しなくてはならないのだ。

訓練がうまく行かないと悩む飼い主さんは是非スワレからやり直して欲しい。

ポイントは犬が離れた場所にいてもスワレのひとことでそこで停座するまで訓練することだ。

もう一つ飼い主が認識すべきなのは、犬の聴覚が人間より優れ、人間が通常発することが出来る音声はすべて捉えることが出来る一方で、実は子音は理解できないことだ。だから飼い主が 「ヨシヨシ、スワレ」 と笑顔で犬に伝えても、飼い主の褒め言葉は犬にはこんな風に聞こえる。

「オイオイ、ウアエ」

彼らはフォルマントと抑揚で飼い主の声を聞けるが子音は理解出来ない。だから飼い主は犬に声符と出すとき、褒めるときは滑舌良くはっきりとしたイントネーションで声に出さねばならない。ただし犬の聴覚は優れているので大声で命じる必要はない。むしろ犬に聞き取れる範囲で小さい声の方は犬も声符を聞き取ろうと集中しやすくなる。

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もう一つのポイントは報酬である餌の与え方だ。慌てて餌を差し出す必要はないと先に述べた。

むしろ犬にある姿勢をとらせ続けるには 笑顔+褒め言葉 の少し後のタイミングで餌を与えた方が良い場合もある。犬はスワレと言われ、飼い主に笑顔で褒めてもらった後に餌を貰うことになる。その間、犬は座った姿勢のまま餌を待つことになり、自然とスワレ・マテがが出来るようになっていくからだ。

そんな風に犬の訓練は、飼い主が犬を徹底的に観察するところから始め、飼い主側の曖昧な対応を排除し、犬の反応を次の訓練にフィードバックしながら進めれば必ず改善する。

ただし、課題によっては時間がかかることもあると覚悟はしよう。大切なのは諦めないこと、一つの方法にこだわらないこと、うまく行った方法は徹底的に繰り返すこと、そうすれば最後はきっとうまく行く。それがあなたと犬の関係改善に繋がっていくはずだ。


著者:史嶋桂
転載元:犬とあなたの関係を改善するには?スワレからやり直そう | dog actually - 犬を感じるブログメディア


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