環境汚染物質は犬にも人間にも悪影響



ノッティンガム大学の研究者が率いる研究チームは、過去30年間にわたって犬の出生率が急激な減少を続けている可能性があることを発表しました。

学術雑誌「サイエンティフィックレポート」に掲載された研究では、約26年間にかけて繁殖用のオス犬の精子の質が大幅に低下していることが判明。

この研究結果では、環境汚染物質の影響があることを強調しています。後に彼ら研究チームは、大人の犬の精巣にあった精子から化学物質が検出されたことを実証しました。また、いくつかの市販のペットフードからも化学物質を発見したのです。検出された化学物質の濃度は、精巣機能に有害な効果があることもわかりました。

犬はもっとも人間に身近な生き物です。研究者たちは、この最新の研究結果が人間の精液の質が低下している事例についても、解決のための新しい情報を提供してくれると信じています。今もこのテーマについて研究者たちは議論を続けています。

この研究のリーダーであるリチャード・リー博士は、獣医科学大学の生殖生物学の専門家です。彼は「オス犬の生殖能力の低下がこのような形で報告されたのは初めて。私たちは、この原因が環境汚染物質によるものだと確信しています。この環境汚染物質が、ドッグフードとオス犬の精巣から検出されているからです」

「この因果関係を特定するためにはさらなる研究が必要とされています。この犬の研究は、人間の研究にも関連してくるかもしれません。それは同じ環境を共有していること、同程度の発生率と同じ症状があること。きっと治療法を見つけることにもつながるでしょう」と研究について話します。


26年間かけて実証されてきた研究

引用の出典元:www.sciencedaily.com

サンプルを中心とした研究では、26年という歳月をかけて繁殖補助犬の中から種付け用のオス犬をメインに精液を採取してきました。

獣医科学科基礎学部長で比較獣医繁殖学教授のゲイリー・イングランド教授は、精液の採取管理者として「この研究の強みは、同じ研究室で同じ定義に基づいて、全てのサンプルを処理、分析したことです」と説明します。

この研究では犬種を5種類に限定して作業を行いました。ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、カーリーコーテッド・レトリーバー、ボーダーコリーとシェパードです。42匹から97匹分の犬を検証しました。

オス犬から精液を採取して分析しますが、精子の割合を分析するために精子の通常の行動パターンを示して、顕微鏡で正常に動いているかどうかを確認します。

26年間の研究で、通常の運動能力がある精子の割合が著しく減少していることが分かったのです。1988年から1998年の間、精子の運動能力は年間約2.5%減少しています。不妊治療中のオス犬がこの研究から引退した後、2002年から2014年まで運動能力のある精子の割合は、年間1.2%の割合で減少し続けるという研究結果がでました。

子犬にも影響があることが判明



研究チームはオスの子犬の「停留精巣」(生まれる前に腹部の中にある精巣の片方または両方が腹部から陰嚢へと移動することができない疾患)の発生率の増加が、親犬である繁殖用のオス犬の精液の質の低下が原因だということを発見しました。

停留精巣の場合、体内に精巣があるため、高温化で精子が生成されないということもあります。さらに、生殖能力が低下することにつながるのです。

繁殖用の犬から採取した精液と去勢手術を受けた犬の精巣を回収し試験をした結果、精子の運動機能と生殖能力を破壊することができる濃度の環境汚染物質が含有されていることがわかりました。

また、精子の質を悪くする環境汚染物質は、市販のドッグフードの中からも発見されました。

リチャード・リー博士は、「私たちが見つけた環境汚染物質は、その他の要因があったとしても生殖能力低下の原因の一部です。例えばいくつかの遺伝的な条件は、生殖能力に影響を与えません。しかし、それを差し引いたとしても、この26年間の急激な変化は遺伝的な問題として見るべきです」と付け加えます。

過去70年間にわたった研究で、人間の精液の質の低下が見られる「精巣発育不全症候群」が問題視されてきています。またこの「精巣発育不全症候群」は、精巣癌、先天性欠損症や尿道下裂と停留精巣の発生率の増加を含む男性の生殖能力に影響を与えます。

人間の精液の質の低下は、研究者の間でも物議を呼んでいます。多くの研究室では、実験方法の変更や、研究データが変わるなどばらつきがあり批判されています。しかし長年にわたる実験者の訓練によって品質管理が改良されてきました。

リー博士は「ノッティンガムの研究では、高度な実験機関の検証で信憑性の高いデータを提示しています。犬の精液の質の低下は、環境汚染物質が原因であるということを提起します。また、人間の男性の生殖能力にも同じような効果があるのかどうかこれからも研究していきます」と話しています。

ドッグフードから環境汚染物質が発見されたことで、ドッグフードの質も見直すことが必要になってくるかもしれません。人間の生殖能力低下の原因究明と治療にも研究結果が反映されるといいですね。

参照:Study demonstrates rapid decline in male dog fertility, with potential link to environmental contaminants

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