Professionalインタビュー Vol.7【ヤマザキ動物看護専門職短期大学教授】花田道子先生

hottoの記事を監修していただいている動物のプロフェッショナルに専門領域でのご経験や方針、また今後の展望などを伺うシリーズProfessional インタビュー。今回は、ヤマザキ動物看護専門職短期大学教授で、ペットの栄養管理に詳しい花田道子先生にお話を伺いました。

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Professionalインタビュー Vol.7【ヤマザキ動物看護専門職短期大学教授】花田道子先生
先生にお聞きしました
花田 道子 先生
北里大学獣医学系研究科研究生修了 博士(獣医学)【獣医師】【ペット栄養管理士】
2014年-2019年 学校法人ヤマザキ学園 ヤマザキ動物看護大学 教授 
2019年- 学校法人ヤマザキ学園 ヤマザキ動物看護専門職短期大学 学科長/教授

【学歴・経歴】
◇1972年 北里大学畜産学部獣医学科卒業 獣医学士
◇2013年 北里大学獣医学系研究科研究生修了 博士(獣医学)
◇1982年-2019年 動物病院NORIKOに勤務
◇1986年- 学校法人ヤマザキ学園 ヤマザキ動物専門学校 非常勤講師
◇2004年-2007年 学校法人ヤマザキ学園 ヤマザキ動物看護短期大学 非常勤講師
◇2014年-2019年 学校法人ヤマザキ学園 ヤマザキ動物看護大学 教授 
◇2019年- 学校法人ヤマザキ学園 ヤマザキ動物看護専門職短期大学 学科長/教授

【専門分野】
◇獣医病理学
◇動物栄養学(動物臨床栄養学)
◇動物看護学

【資格】
獣医師
◇獣医学 博士(獣医学)
◇衛生検査技師
◇ペット栄養管理士
◇KYG栄養カウンセラー
◇日本獣医ホメオパシー医学会認定獣医
◇日本ホメオパシー医学会認定獣医
◇中学校教諭一級普通免許(理科)
◇高等学校教諭二級普通免許(理科)

【所属学会】
日本獣医がん学会
一般社団法人 日本統合医療学会
一般社団法人 日本ペット栄養学会
日本ウマ科学会
日本動物看護学会
一般社団法人 日本ホメオパシー医学会
一般社団法人 日本獣医ホメオパシー医学会

【著作物】
『ペットがガンになってしまったら』(共著)(メタモル出版)
『ペットがガンに負けないために』(メタモル出版)
   
【翻訳 共著】
・Animal Health Technoloogy
邦訳表題:「アニマルヘルステクノロジー」
・CANINE REHABILITATION TEXT FOR THE ANIMAL HEALTH TECHNICIAN BASIC LEVEL
邦訳表題:「犬のリハビリテーション」

【飼育動物】
トイプードル、日本猫(各1匹)

【ペット歴】
幼少期の3歳頃から、日本犬、秋田犬、スピッツ、ヨークシャーテリア、プードル、日本猫など

現在、耳の聞こえないトイプードル(15歳)と、4歳頃から目の見えなくなったキジトラ猫(11歳)と老夫婦で楽しく暮らしています。

【ペットへの想い、職業上のペットとのかかわり】
ペットはズバリ!「臨床の師」
大学卒業と同時に研究所の病理研究員として顕微鏡相手の毎日を過ごしたのち、友人の動物病院開業を機に勤務医として臨床獣医療に携わることになった私にとって、ペットは暖かくて、かわいらしくて、懸命に辛い治療にも耐えて反応してくれる患者というより先生でした。

この子達にとって何が最良の治療法かと思い悩み、体に優しい自然療法も取り入れたものを行ってきました。

今の私にとってペットは「健康維持を第一」として、病気とも上手に付き合い、共により良い状態になることを目指す協力者です。
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病理学の研究者から臨床医へ

病理学の研究者から臨床医へ

―まだ女性獣医師が珍しかった時代に、獣医学部に進学されました。何かきっかけがあったのですか?

花田先生(以下、花田):小さい頃からずっと犬と一緒に暮らしていて、動物はとても身近な存在でした。

進路を決めるにあたって、私の一族は医師や薬剤師が多かったので医学部に行こうかなとも思ったのですが、どうせなら大好きな動物を診る医師になろうと思い、獣医学部の受験を決めました

当時は女性獣医師が本当に少なかったですし、獣医師の多くが産業用の大動物(馬、牛など)の診療を担当していた時代でしたから、学校の先生や友達もすごく驚いていました。

父にも反対されるかな…と思ったのですが、意外にも父は「そうか、獣医になるのか」と言って驚きもせず、反対もせず、快く送り出してくれました。

後になって親族に聞くと、大の動物好きだった父も子どものころは獣医師になるのが夢だったとのこと。

自分の進みたかった道に、思いがけず娘が進むことになって、内心喜んでいたのかもしれません。

病理学の研究者から臨床医へ

進学先は北里大学畜産学部獣医学科です。

1学年に女性は1割強しかいませんでしたが、特に不自由を感じることもなく、楽しく学ぶことができました。

卒業後は北里研究所の研究員として、主に豚や鶏のワクチン開発をテーマに病理学部門で研究を続けました。

病理学というのは、病気の原因の解明や病気の診断を確定するのを目的とする学問で、検査/研究対象は動物の細胞や組織、臓器などの標本ばかり。

獣医師なのに、生きた動物と接する機会はあまりなかったですね(笑)。

転機が訪れたのは、1982年

友人の獣医師が麻布十番に開いた動物病院で初めて臨床の獣医師として家庭動物の診療をすることになったのです。

―動物病院では1982年から2019年まで実に37年間にわたって診療を続けられました。今、振り返ってみて、印象的なエピソードはありますか?

病理学の研究者から臨床医へ

花田:顕微鏡で細胞や組織ばかり見ていた研究所の仕事とは違って、動物病院での仕事は生きた動物たちが相手

様々な症例を抱えてやってくる多種多様な動物たちから、本当に多くのことを学びました

その意味で、診療させてもらった動物たち一頭一頭が、すべて私の先生でした。

診療にあたって、大切にしていたのは「動物たちをよく見ること」

特に、注射や点滴など何らかの処置をした後は目を離さず、しばらくは私自身もしくは担当の動物看護師がしっかり動物の様子を見続けることを徹底していました。

今でも覚えているのは、ある猫に点滴をしたときのこと。

ラクトリンゲル液の点滴バッグには、ビタミンCの他にビタミンBも足して入れていたのですが、ちょっと気にかかることがあったので、動物看護師の1人に「注意して見てあげて、もし嘔吐などの異変があったら、すぐに私を呼んでください」とお願いして他の仕事に戻りました、すると10分後くらいに彼女が飛んできて「先生、大量のよだれが出ています!」と。

急いで行ってみると、明らかに様子がおかしいので、すぐに点滴バッグを外し、新たにラクトリンゲル液にビタミンCだけの点滴を開始しました。

すると、よだれがピタっととまりました。

そう、この猫にはビタミンBが合わなかったのです。

もし、最初に点滴をしたまま放置して様子を観察していなかったら異変に気付くのが遅れ、取り返しのつかない事態になっていたかもしれません

ちなみに、ビタミンB1が欠乏すると猫は上手く歩けなくなるなどの神経症状を発症します。

猫に生のイカやタコを食べさせてはならないのは、これらに含まれるチアミナーゼという酵素が猫の体内のビタミンB1を破壊してしまうからです。

ただし、この猫のケースのようにビタミンBが悪く作用してしまうこともあります。

hottoで愛犬の栄養に関する記事を執筆・監修する際には、こういった臨床での経験を踏まえて、飼い主さんとペットにとって実践的で有益な情報を提供するように心がけています

病理学の研究者から臨床医へ

学科長を務めるヤマザキ動物看護専門職短期大学にて

自然療法を取り入れた食生活で病気を予防

―現在はヤマザキ動物看護専門職短期大学で教鞭をとる傍ら、自然療法による病気予防の研究にも取り組んでおられます。病気予防に関して、飼い主さんにアドバイスをお願いします。

花田:犬や猫の病気も、人の病気と同様にストレスや環境汚染、食品添加物等が大きく関係しています。

病気を防ぐには、なるべくこれらの要素をペットの生活環境から取り除いてあげることが大切です。

特に食事は、添加物の少ないオーガニックのフードや手作りフード、ヨーグルトを与えるなど、ペットの年齢や体調にあわせて工夫してあげてください

毎日の食事+αの健康法として推奨しているのは、私自身が長年研究してきた「核酸栄養療法」です。

具体的にはサケの白子から抽出するDNA核酸と、ビール酵母から抽出するRNA核酸を中心としたサプリメントを与える療法なのですが、これまで肝機能障害などさまざまな疾患の犬や猫で症状の改善が確認されています。

私自身も自分の犬や猫に与えてきて、その効果を実感しています。

病気になってから与えるのではなく、元気なうちから病気予防のために取り入れるのが効果的です。

興味のある方には、ご相談に応じます。

自然療法を取り入れた食生活で病気を予防

栄養学の実習で学生たちと一緒に

あとは、”とにかくペットの様子をよく観察し、体に触ってあげる”こと。

そうすることで、ペットの体の異変にいち早く気づくことができ、病気の「早期発見・早期治療」に繋がります

また、もちろん病気にならないこと、病気が治ることが一番ですが、それに執着して神経質になりすぎるのも考え物。

たとえば体力のない老犬に無理な手術を受けさせたりすると、心身に大きな負担を与えてしまいます。

もし、病気になってしまったら獣医師と相談して適切な治療を受けつつ、病気と上手に付き合い、ペットの心身になるべく負担をかけないようにして、ペットと一緒により良い暮らしを目指していきましょう

【花田道子先生 監修記事】

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